2023年6月13日

「保安上支障がある」との理由で難民認定申請書の差入れを不許可にした事例(大阪入管)

 

 ツイッターで、東京入管職員が被収容者の難民申請を妨害しているとの投稿があった。


昨日東京入管へ行って分かったことだが、現在女性被収容者のブロックでは難民申請のための書類を職員が渡すのを拒否している。

外部の人が差し入れたものを記入し提出しようとしても職員に「受理しない」と言われるという。

たった1ヶ月前に男性の被収容者と面会した時はその場で申請書類を貰えた。

https://twitter.com/Tommyhasegawa/status/1667303311828217856


 私も1年半ほど前(2021年12月)に、大阪入管で似たようなケースに出くわしたことがある。やはり処遇部門の職員(入国警備官)が難民申請書を渡すのを拒否したという事例だ。

 ただし、上記のツイッターのケースは難民申請をする意思のある被収容者に申請用紙を手渡すのを拒否したというのに対し、私が出くわした大阪でのケースは、私が本人に難民申請用紙を差し入れようとしたのを、大阪入管が「保安上の理由」で許可しなかったというものであって、そこは同じではない。

 あとで言うように、大阪入管が面会を許可せずに翌日には送還を実施したため、私は結局このかたに会えず、難民申請をしたかったのかどうかの意思確認ができなかった。それで、この件は当時ちゃんと問題化しようとしなかったのだけど、やはり見すごせない問題がある。ということで、ここにとりあえず記録し、公開することにしました。



 ことの経緯は以下のとおり。

 2021年12月17日の昼ごろ、仮放免中の女性が難民申請の審査請求を棄却されて大阪入管に収容されたとの情報が、同国人のコミュニティから寄せられた。この人は妊娠しているということであった。

 妊娠しているにもかかわらず収容したということは、入管は収容が長引くのを想定していないはずで、つまり即日あるいは近日中に送還する準備(航空券や渡航証など)をすでに終えているだろうと考えられた。

 本人が帰国しても危険がなく送還に同意しているのであればいいが、私としては、このかたが難民申請していたらしいという情報が気になった。帰国しても危険はないのだろうか、と。

 また、入管職員が「難民申請は2回までしかできない」という虚偽の説明(実際は申請できる回数に上限はない)をしたという話を、この時期、複数の仮放免者から聞いていたので、この女性も虚偽の説明を受けて不本意ながら再申請を断念している可能性もありうると考えた。

 そういうわけで、このかたに面会して難民認定申請の再申請ができることをつたえたうえで、そうしたいとの意思確認ができれば、大阪入管に送還を中止して申請を受け付けるように申し入れよう、と。そのつもりで面会申出書を大阪入管で出した。同じ17日の16時少しまえであった。同時に、私の名刺と難民認定申請書(入管庁のウェブサイトからダウンロードして印刷したもの)を差し入れた。

 ところが、40分以上待たされたのち職員が出てきて、面会も差し入れも「保安上の理由」で許可しないと言われた。面会はともかく、名刺や申請書といった紙きれがどうして「保安上」の支障があるのか説明してほしいとくりかえし求めたが、職員はいっさいの説明をこばんだ。入管施設は、人を閉じこめて自由をうばう施設なので、「逃亡」につながるような物、あるいは自傷行為につながったり武器になりうるような危険物の外部からの差し入れは、「保安上の支障」があるので許可できないという理屈は理解できる。しかし、難民申請書がどう「保安上」問題になるのか、まったく理解ができない。

 結局、この日は面会も難民認定申請書の差し入れも許可されなかったためできなかった。そして、このかたは翌18日の便の飛行機で送還されてしまった。



 以上の経緯からみるに、大阪入管が私の面会と難民認定申請書の差入れを許可しなかった理由は、被収容者が難民申請をして翌日の送還を中止せざるをえなくなることを危惧したからだと考えるしかない。ということは、このかたがあらためて難民として保護を求める可能性があると大阪入管は認識したうえで、送還を強行したということだ。

 なお、私とはべつの、仲間の支援者が抗議の電話をかけてくれたのだが、大阪入管はこの支援者に「知らない人からの面会と差し入れということで、被収容者本人がことわったのです」と説明したそうだ。職員(処遇部門の面会担当)が私に説明した「保安上の理由」で「(大阪入管が)許可しなかった」という話と完全に矛盾する。

 後日、大阪入管に保有個人情報開示請求をかけてみたら、以下に画像をのせた文書が開示された(黒塗りは大阪入管が、青塗りは私がマスキングしたところ)。「保安上支障があるとして、面会及び差入れのいずれも不許可処分とし」たと、はっきり書いてある。「(入管は許可したけれど)被収容者本人がことわった」という話とはぜんぜんちがう。職員氏、しれっとウソつくなよなあ。びっくりするわ。

「〇〇〇〇の被収容者に対する支援者
の面会等申出に係る対応について」


 ところで、これも画像(記事末尾)で示したように、「電話記録書」という文書も開示された。大阪入管と本庁(入管庁)警備課とのあいだの電話の内容を記録した文書のようである。(本記事で紹介した文書はいずれも「大阪出入国在留管理局が保有する令和3年12月17日に開示請求者本人が提出した面会・物品授与許可申出書に係る警備処遇関係報告書(開示請求者本人の個人情報が含まれない書類を除く。)」として大阪入管から開示されたものである)

 例によって内容はすべて黒塗りにで日付すらかくされているが、私が12月17日に面会と差入れの申し出をしたのに対して、大阪入管が本庁に指示をあおいだ電話の会話内容が記録されていると考えてまちがいないだろう。だとすると、本庁の監督のもと、大阪入管は「保安上支障がある」との理由で、難民申請書が被収容者にわたるのを阻止したということになる。

 冒頭のツイッターに投稿された東京入管のケースもそうだが、送還を強行するために難民申請書が被収容者の手にわたらないようにしているということであって、つまり入管が収容して身体を拘束している人の申請を妨害し、その権利をうばっているのだ。

「電話記録書」1ページ

「電話記録書」2ページ

「電話記録書」3ページ


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