入管法改定案の「修正協議」などの過程で、政府与党から以下のような話が出ているのだという。ふざけた話だとしか言いようがない。
在留資格ない子に特別許可 政府・与党が検討 入管法改正案:朝日新聞デジタル(2023年4月25日 5時00分)
難民認定の申請中でも外国人の送還を可能にする入管難民法改正案をめぐり、政府・与党が、在留資格がない子どもらに「在留特別許可」を与える方向で検討を始めたことが、関係者への取材で分かった。修正協議などにおける立憲民主党の要求を踏まえた。
在留資格のない子どもらに在留特別許可を与えて救済するとのだと聞くと、肯定的に評価してよいことであるかのようについ思えてしまう。しかし、子どもたちに在留特別許可を出すのは現行法においても可能なことだ。現行法でできる(法律を変えなくてもできる)ことが、法律の改定案の「修正協議」で議論されるのが意味不明である。法改定とはぜんぜん関係のない話だ。
そもそも問われなければならないのは、現行法のもとでも子どもたちを救済できるのに、なぜ今の今まで政府はそれをやってこなかったのか、ということではないのか。そう考えると、こんなもん、責められるべき話であっても、ほめられたり歓迎されたりするような話なんかではまったくない。
入管庁が公表していた資料によると、2019年11月時点で0歳から20歳未満の被退令仮放免者は339人にのぼるという。300人以上の子どもを、仮放免という働くことが禁じられ、国民健康保険にも加入できず、移動の制限を課された状態に置いたままほったらかしにしてきた(いる)のは、犯罪的と言ってもよいようなことだ。子どもたちに対して、当人に責任のあるはずのない「不法残留」やら「不法入国」だとして退去強制処分をくだし、無権利状態に置き続ける。こんなむちゃくちゃな虐待を国をあげてやってる国が日本のほかにどこにあるだろうか。
くり返すが、法によって強大な権限を与えられている入管は、その気になればこの子たちに在留特別許可を出すことは可能だったし、今すぐにそうすることも可能なのである。しかし、それをやらずに300人以上の子どもたちを無権利状態に置き続けてきた(いる)のは政府である。みずからの不作為がもたらした問題を、「改善します」と言って野党をだきこむ材料にしようとする政府・与党はあつかましいにもほどがある。
人をしょっちゅう殴りまくってるやつが、「これからはあなたを殴るのを少しひかえようと思うので、わたしの要求をのんでくれないか?」と言ってくる。たとえるならそういうことではないのか、与党らがこのたび持ちかけてきている「修正協議」なるものは。そいつが殴らなくなる保証はなにもないし、殴らなくなったとしてもそれは「よいこと」などではない。殴らないのはたんにあたりまえのことだ。
話を在留資格のない子どもたちのことにもどすと、野党はまず、そうした300人以上の子たちの存在が政府の犯罪的な不作為の結果であるということをしっかり認識すべきだ。政府がみずから持っている権限を使ってこの子たちを救済するなどと言い出してきても、ごまかされてはならない。いままでそれをしてこなかったのはなぜなのか、だれが子どもたちを放置することを決定したのか、入管のロジックを暴露するとともに入管の役人どもの責任を追及することこそ、改悪入管法案に批判的関心をもつ野党議員のすべきことではないのか。
ところで、先ほどのたとえは適切でないところがある。暴行野郎に殴られるのは野党議員ではないからだ。外国人である。殴られるのを容認し、あきらめるのはたんなる「お人よし」ではすまない。それは結果的に政府の人権侵害に加担し共犯者となることである。
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