2024年12月7日

バカバカしいほどの報道の仰々しさ

 

 ときどき、地方紙やテレビの地方局のウェブサイトに、入管法違反で外国人が摘発されたというニュースが掲載されているのを目にすることがある。警察発表をただたれ流したような内容のニュースだ。市民・住民の生活にとって、いちいち報道する意義があるとはまったく思えない。

 たとえば福島中央テレビのつぎのようなニュース。


福島市で自称台湾国籍の若い女を出入国管理及び難民認定法違反容疑で現行犯逮捕・福島(2024年12月5日掲載)|中テレNEWS NNN

福島市で自称台湾国籍の女が旅券不携帯の疑いで現行犯で逮捕されました。

出入国管理及び難民認定法違反の疑いで逮捕されたのは自称台湾国籍で住居不定、職業不詳の若い女です。

12月5日午後2時20分ごろ、一般の人からの通報を受け、現場に駆けつけた警察官がパスポートの提示を求めたところ、所持していないことが判明し、出入国管理及び難民認定法違反容疑で現行犯逮捕されました。

警察は女がなぜパスポートを持っていないのか調べています。


 たかがパスポートの不所持である。捜査の過程で在留期間切れ(オーバーステイ)などが明らかになるかもしれないし、あるいはそうではないかもしれない。たんにパスポートを持ち歩いていなかっただけかもしれない(たとえば買い物やパチンコに出かけるのに、わざわざパスポートなんか持ってでるかっつうの)。いずれにしろ、福島市の市民・住民の安全や福祉になんの関係もないニュースである。

 それにしても、このバカバカしいほどの仰々しさをみよ。「現場に駆けつけた警察官がパスポートの提示を求めたところ、所持していないことが判明し」とか、「警察は女がなぜパスポートを持っていないのか調べています」とか。くだらないことをくそまじめに書かないでくれ。あほらしい。

 まじめに書くべきことがあるとすれば、どうして警察官は「外国人」(にみえる)相手に対しては、旅券みせろと要求し、みせなかったら「旅券不携帯」だと言ってしょっぴくことが許されているのか、またそれは許されてよいことなのかとか、そういった問題についてではないの?

 こういうニュースが、だれにとって有益かといえば、警察や入管である。要約するならば、法に違反している(疑いのある)「外国人」がいて、それを警察官が逮捕したという報道である。実際のところは、オーバーステイになっている人を摘発したところで、市民・住民の安全や生活の向上に寄与することなど、あるはずもない。でも、上に引いたようなニュースは、「われわれ」(ってだれだ?)の安全をおびやかす「外国人」が地域におり、警察や入管がこれを取り締まることで「われわれ」の安全を守ってくれているかのような(誤った)イメージを視聴者や読者に植えつけようとする。

 ひとつひとつは短く、情報量も少ないニュースを、少しずつ継続的にあびることで、私たちは「外国人」を根拠もなく危険視する見方と、警察や入管といった国家機関が「われわれ」(ってだれだ?)にとって有益な働きをしているかのような幻想をなんとなく持たされていくのではないか。

 こんなふうにして、われわれは「外国人」を他者化した見方を強化していってしまうのだろうが、ここできちんと他者化すべきなのは、警察とか入管とかでしょう。


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