2024年11月20日

「重病者にしか仮放免は適用しない」ハンストを助長する入管庁方針

 

 大阪入管でわたしが面会しているかたのひとりが、11月17日の朝からハンストをおこなっています。収容期間が長くなっていることから、これに抗議してのハンストです。

 そういうわけで、今日、いそいで申入書をつくって、支援者3名の連名で大阪入管に抗議の申し入れをしてきました。

 6月10日に昨年成立した改悪入管法が施行され、監理措置という制度が創設されました。これにともなう入管庁の新しい仮放免についての運用方針が、収容されている人のハンストを助長していると言うべき状況があります。

 こんなことやってると、いずれまた入管収容施設での死亡者が出かねないと危惧されます。ところが、新たな入管法の施行から5か月ほどしかたってないこともあり、問題の深刻さがまだぜんぜん知られていないだろうと思います。

 この深刻さを少しでも周知したいということで、申入書を公開します(ハンストをしている人の名前を「A氏」と匿名にしています)。



申 入 書

2024年11月20日

大阪出入国在留管理局 局長 殿

(申し入れ者3名の名前――省略)


 貴局に収容されているA氏から私たちのもとに、11月17日の朝からハンガーストライキをしているむね連絡がありました。私たちは、A氏がハンストをおこなうことによって自身の健康を害することを強く懸念しております。

 A氏と継続的に面会し、話を聞いてきた私たちからすれば、仮放免についての入管庁の運用方針が、A氏をハンストせざるをえない状況に追い込んでいるものと理解するよりほかありません。したがって、以下に述べるように、運用方針をあらため、早期に仮放免を適用することでA氏を収容から解放するよう申し入れます。



 6月10日より改定入管法が施行され、監理措置制度が創設されました。これにともない、入管庁は仮放免についても従来とは異なる運用方針をとっています。

 10月9日に、WITH(西日本入管センターを考える会)など6団体で貴職に申入れたとおり、監理措置制度は、被監理者の人権をいちじるしく侵害すると同時に、この人権侵害を民間人である監理人に強要する制度です。このため、従来、仮放免の身元保証人を引き受けてきた支援者や弁護士の多くは、新しい制度である監理措置の監理人を引き受けることはできないと考えています。

 このような状況において、A氏は弁護士が身元保証人を引き受けて仮放免を申請しています。

 しかし、改定入管法施行後、「仮放免を許可するに当たっては、被収容者の収容を解除するための原則的な手段が監理措置であることを前提としてもなお、監理措置によることなく収容を一時的に解除することが相当と認められる程度の健康上、人道上その他これに準ずる理由が求められる」(入管庁審第1077号「仮放免運用方針の一部改正について(通達)」)という運用方針をとっております。このようにきわめて限定的な場合にのみ仮放免を許可するという現行の方針のもとでは、A氏は収容を解かれる見込みを持てないまま、収容が長期化していくことになります。事実、A氏の収容期間は6か月ほどに及んでいます。この収容期間は、法施行日前に仮放免申請した、あるいは法施行日以後に監理措置を申請した、貴局の他の被収容者たちと比較して、異例の長さと言えるものですが、こうして収容が長期化するなか、しかも収容から解放されるめどが本人にとってまったくもてないのです。

 また、A氏は貴局の職員から「改定法のもとでは、重病など例外的な場合でなければ仮放免は適用されない」という趣旨の説明を受けたそうです。

 監理措置と仮放免についてのこうした制度運用のもとでは、A氏のような状況にある被収容者にとって、「自身の健康状態がいちじるしく悪化することでもないかぎり、収容から解放されることはないだろう」と考えるのは必然です。いわば、入管がその制度運用によって、被収容者にハンストなど自身の健康を害する行為をうながしているようなものです。

 このような制度運用を続ければ、2019年6月に大村入管センターに収容されていたナイジェリア人男性が拒食のすえに餓死したのと同様の事件をまたくり返すことになるのではないかと、私たちは強く危惧します。



 A氏は難民申請者であり、難民該当性を自身で立証しなければなりませんが、貴局が収容を継続しているため、その立証作業がさまたげられています。

 また、頚椎症の治療・療養を必要としていますが、収容下にあって、投薬によって痛みを緩和する治療を受けているのみです。診察する医師からA氏は、「薬とリハビリによって治療するのが一般的だが、ここではリハビリができないので投薬のみの治療になる」と説明されています。

 10月9日の申入れに対して11月14日にいただいた貴局からの回答では、被収容者に対し「社会一般の水準に応じて適切な医療を提供している」とのことでした。しかし、上記の医師の評価からすれば、A氏の収容を今後も継続しながら、社会一般の水準に応じた医療を提供するのは不可能でしょう。

 このように、収容によってA氏は権利を侵害されています。A氏が難民該当性の立証作業と治療・療養ができるように、仮放免によって収容から解放するよう申し入れます。


以 上




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