差別によって問題がおきたときに、その関係者たちはそれがあたかも差別によっておこった問題ではないかのように処理しようとするということが、しばしばある。このことが、差別の問題に対処しようとするときのなかなかやっかいなところのひとつではないだろうか。
日本テレビの番組がひきおこした以下の件も、典型的な人種主義的な差別扇動をやらかしたという問題なのに、テレビ局はあたかも差別とはべつの問題であるかのようにこれを処理しようとしている。
日テレ・夜ふかし謝罪 中国女性「カラス食べる」と言っていないのに:朝日新聞(2025年3月27日 22時04分)
日本テレビは27日、バラエティー番組「月曜から夜ふかし」の街頭インタビューで、中国出身の女性が「中国ではカラスを食べる」という趣旨の発言をしていないのに、制作スタッフが意図的に編集したとして番組公式サイトでおわびした。
サイトによると、24日の放送で、女性が中国ではカラスがあまり飛んでいないという趣旨の発言をした後、「みんな食べてるから少ないです」「とにかく煮込んで食べて終わり」といったコメントが続いた。
しかし、実際には女性が「中国ではカラスを食べる」という趣旨の発言をした事実は一切なかったという。
別の話題について話した内容を制作スタッフが意図的に編集し、女性の発言の趣旨とは異なる内容にしていたという。(後略)
問題を2つにわけて考えることができる。
ひとつは、番組制作者がこの女性の発言を勝手に改変し、この人が言っていないことをまるで言ったかのようにねつ造したという問題。
もうひとつは、こうした発言の改変・ねつ造が人種主義的な差別行為にほかならないということだ。番組制作者が中国人女性の発言をでっちあげることを通じて視聴者に発しているメッセージは、「あいつら〇〇人は、(われわれがけっして食べない)△△を食うヤバンなやつらだ」という形式のもので、人種主義的な差別扇動として典型的なもののひとつである。(最近でも、デビ夫人やトランプがこの種の差別扇動をやっていたよね。)
さて、番組の公式サイトでは、この件で「お詫び」をのせている。
ところが、この「お詫び」文には、差別に関係する問題であるとして反省していることを示す文言がいっさいない。「このインタビューは、制作スタッフの意図的な編集によって女性の発言の趣旨とは全く異なる内容となってしまいました」として、改変・ねつ造をおこなったことを謝罪するにとどまっている。
これはとても奇妙なことにみえる。番組がおこなったのは、たんなる発言の改変・ねつ造ではなく(それだけでも十分に問題ではあるけれど)、あきらかな人種差別の扇動なのだから。そこを知らんぷりして、どうやって「再発防止に努め」るというのか。
番組のサイトでは、「日本テレビでは、直ちに今回の事実関係及び原因の確認を行うとともに、改めて番組制作のプロセスを徹底的に見直し」ますということなので、今後の検証作業を待ちたいところではある。これが差別の問題だということを直視し、きちんとそのことに向き合う検証をしてほしい。そこがむずかしいんでしょうけど。
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【番組公式サイトに掲載された「お詫び」】 |
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