2025年3月31日

黙認から取り締まり強化へ 2000年ごろの政策転換

 

 5年ほど前にとあるSNSに投稿した文章を2つ、このブログ記事の下のほうに転載します。

 「2003年ごろの新聞記事シリーズ」と称して、当時の新聞記事を紹介しつつ、この時期にあった非正規滞在外国人をめぐる政策の変化、そのひとたちをとりまく社会の変容について考える糸口にしたいなあと思っていたのですが。まあ、あきっぽい性格なので「シリーズ」と言いながら2回だけ投稿しただけで、あとが続きませんでした。

 この2000年ごろに始まった日本政府の外国人政策の転換をどう理解し評価するのかということは、入管収容の問題、あるいは仮放免者と呼ばれる人びとがおかれている問題を解決するために見落とせない重要な要素のひとつだと、私は考えています。そういうわけで、当時の新聞記事を調べたりといった作業をちょっとずつやってたのです。

 そうやって集めた資料の一部は、仲間といっしょに以下のパンフレット(リンク先からPDFファイルをダウンロードできます)をつくるときに、活用しました。


なぜ入管で人が死ぬのか~入管がつくり出す「送還忌避者」問題の解決に向けて~
(2022年、入管の民族差別・侵害と闘う全国市民連合事務局 発行)


 現在ではよく知られるようになった入管収容や「仮放免」をめぐる人権侵害問題がどういう機序で起こっているのか。パンフレットではこの問題が、最近20年ほどの入管の政策・制度運用の変化と連続性を参照しながら分析されています。手前みそになりますけれど、なかなかおもしろい読み物だと思います。

 以下に転載する投稿を読んで興味をもたれたかたは、上にリンクしたパンフレットも見にいっていただけるとさいわいです。


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転載(1) 2020年3月24日の投稿

『日経新聞』
03年12月24日

 写真(クリックすると大きくなります)は、2003年12月24日の日経新聞の記事です。

 ちょっとわけがあって、この時期の非正規滞在外国人に関する記事をあつめています。

 政府による「不法滞在者半減5か年計画」なるものが始まるのがこの翌年の04年。入管だけでなく警察も連携するかたちで強力な摘発は、03年ぐらいに開始されています。

 記事では「黙認のツケ」と書いてますが、ビザのない外国人の存在を一定程度「黙認」して労働力として利用する政策からの転換がこの時期にはかられたのです。

 09年には入管法が改正され、12年に在留カードが導入されることがきまります。こんどまた書きますけど、この新しい制度というのは、ビザのない外国人は日本に存在しないということを前提としたものです。この新しい在留管理制度は、ビザのない人がなんとかかろうじて生きていくためのスキマのようなところを、徹底的につぶしにかかろうという意味のものだったと思います。

 日経新聞の記事では、「来日外国人による凶悪犯罪が増加の一途をたどる中」などと根拠のない、かつ差別をあおるようなろくでもないことを書いてますが、興味深いのは、摘発強化が零細企業の経営を直撃しているというところです。日本の産業がどれほどビザのない外国人労働者に依存してきたのかということの一端がここにあらわれています。

 03年以降というのは、現在の収容長期化問題がどのような経緯で生じてきたのか考えるうえで、決定的に重要な時期(のひとつ)だと思ってます。またこんど、この時期の新聞記事などで興味深いものをここにあげていこうと思います。



転載(2) 2020年3月28日の投稿

2003年ごろの新聞記事シリーズ第2弾

『朝日新聞』夕刊
03年7月11日

 1つめの画像は、外国人登録の手続きをする非正規滞在者が増えているという記事。03年7月11日の朝日新聞夕刊です。

 80年代後半から90年代前半から日本でくらしている人も、在留期間が10年をこえてきているわけで、生活の必要上、外国人登録をする人も増えてくるわけです。すでにこの時期に、いわゆるニューカマーの外国人住民の定住がすすんでいるということが、こういったニュースにもあらわれていると思います。

 外国人登録の情報を管理していたのは市役所などの自治体です。某市役所の市民課にむかし勤めていたひとに聞いたところ、外国人登録で「在留資格なし」という人はけっこういたけれども、そんなものをわざわざ問題にする雰囲気はなかったし、いわゆる「不法滞在」を入管に通報するなんて考えられなかったといいます。

 下の記事は、その3か月後の朝日新聞(03年10月22日付)。

 入管が外国人登録証の申請情報をつかって、1600人以上の非正規滞在者を摘発したというニュース。自治体が入管に求められてビザのない人の情報を提供したというわけでしょう。住民にサービスを提供するのが自治体の仕事。そのために保有している住民の情報を、そういう目的とぜんぜんちがうかたちで入管にわたすのは、けしからんです。

 03年ごろに開始される非正規滞在者の集中摘発が、入管だけではなく、警察や地方自治体など他との機関との連携・連絡のもとすすめられのだということも、このニュースにあらわれているかと思います。

『朝日新聞』03年10月22日










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 転載は以上です。

 現在「仮放免」という生存権の否定された状態におかれている3,000人ほどのうち、一定数(正確な数字はわかりませんが、少なくない人数ではあります)は、2000年代はじめごろの政策転換をまたいで日本でくらしてきた人たちです。日経新聞の記事のいうところの「黙認のツケ」を政府は、また日本社会は、いまだ清算していない、ということだと思います。


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