何度かこのブログでもとりあげてきましたが、昨年6月に改定入管法が施行され、監理措置制度というものがスタートしました。この新制度のもとで起きつつある重大な問題については、以下の記事などに書きましたので、ここではくり返しません。
支援者を人権侵害の共犯者にする 監理措置制度のやばさ(2024年11月10日)
今回の記事では、この新しい制度の問題の本質ではないけれど、収容されている人への心理的影響として、気になっている点をちょっと書きます。
新しい入管法のもとで、収容を解除するための制度が2つ併存することになりました。新たに創設された「監理措置」と、従来からある「仮放免」の2つです。
法改定をへて仮放免は制度として残りましたが、入管庁は、新たな制度である監理措置を、被収容者の収容を解除するための原則的な手段と位置づけています。で、上のリンク先の記事でもふれましたが、入管の職員は仮放免は重病などの被収容者に例外的に適用すると案内しています。
私が被収容者との面会活動をしている大阪入管では、監理措置のほうは申請すればほとんど許可されているという状況です。上にリンクを貼った記事では、この監理措置という制度が、これによって収容を解かれれる人(被監理者)にとっても、その監視役をになわされる民間人(監理人)にとっても、また入管法改悪前から仮放免されている人たちにとっても、問題の大きい制度だということを述べました。しかし、入管にとってみれば、この新しい措置を早く定着させたいというような思惑があるのでしょうか。大阪入管では、家族などを「監理人」に立てて監理措置を申請した被収容者は、ほぼほぼすべて許可されて収容を解かれています。新法施行後6か月ぐらいたった現在、すくなくとも20名以上の被収容者が監理措置によって収容を解除されているはずです。
ところが、「監理人」の引き受け手がみつからない被収容者は、監理措置を申請できません。とくに、入国しようとして空港で拘束された難民申請者は、日本に人脈などまったくないという人も当然多いわけです。こういった被収容者たちについては、従来は、支援者や弁護士が身元保証人を引き受けて、仮放免を申請して収容を解かれるということが多くありました。しかし、さきにみたように仮放免は重病などの場合にのみ例外的に適用するという方針のもとでは、支援者や弁護士を保証人に申請しても、許可される見込みはない。
というわけで、入管が仮放免を重病者のみに適用するという方針をあらためないかぎり、こうした人たちは収容を解かれる可能性はない、という状況に置かれるのです。
身体拘束から解放される見通しがないということ自体、本人にとって絶望的なものでしょう。さらにこれにくわえ、おなじ施設に収容されている人たちで監理措置を申請した人はつぎつぎと出所していくという状況は、この絶望感をますます深めているようにみえます。まわりの人たちは、収容期間が3か月とか4か月ぐらいでみんな出ていくのに、自分はここに残され外に出られない、というわけです。
長期収容ということであれば、2018~19年ごろ(新型コロナウイルスの感染拡大問題で、全国の入管施設が仮放免措置により収容人数を減らすようになった2020年以前)のほうが、現在よりもひどかったとは言えます。このときは、仮放免許可がほとんどまったくと言ってよいほど出なかった。3年をこえるようなすさまじい長期収容が常態化し、4年超という人もめずらしくなかった。そうしたなか、命がけでのハンストや自傷行為があいついだということは、当時よく報道もされていたとおりです*1。
現在は、6か月をこえるような長期収容は少なくなってはいます。しかし、入管が仮放免についていまの方針を続ければ、監理措置を申請しない/できない人の収容はまちがいなく長期化していきます。そして、監理措置を申請した人が半年たたずに解放されていくいっぽうで、収容施設に取り残されてしまう人は自身の不遇さをいっそう痛切に感じずにはいられないでしょう。かつての「だれもが解放されない」という状況における絶望感もすさまじかったはずですが、「解放される人もまわりにいるのに、自分だけ取り残されてしまっている」という不遇の感覚が心身をむしばむ影響は、けっして軽視できないほど深刻です。
私が危惧するのは、2019年ごろとは状況にちがいがあるとはいえ、現在も当時におとらず被収容者の自死や自傷行為を引き起こしかねない危険性が高まりつつあると感じられることです。収容されている人と面会しながら、ここ数か月で私が強くいだきつつある危機感です。人間を監禁しその自由を奪うということが、どれほどその人の心身に対し破壊的にはたらくのか、軽く考えてはなりません。
その危機感を共有したいという思いもあっていまこの文章を書いているのですが、今週末(1月19日(日))には、「改悪入管法撤廃!」などをテーマに、全国各地でデモやスタンディングなどのアクションがおこなわれます。私は、大阪でのアクションに参加して、監理措置への反対などの声をともにあげようと思います。
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1.19 全国一斉アクション
改悪入管法撤廃!
人命、人権よりも送還優先の
「送還一本やり方針」を許さない!
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