先日のこと。とある会食の場で差別発言が出るのに居合わせた。
その人は、発言するときに口の前に人差し指を立てて、「ここだけの話なんだけど」とでも言いたげなしぐさをした。その直後に地域を差別する言葉がぽんと出てきた。
会食の場には10人ぐらいいたのだが、その発言を聞いたのは私もふくめて近くにいた4人ぐらいだったと思う。
差別発言やそれをした人については、ここであれこれ書くつもりはない。ただ、その発言がでたときの私たちの対応がどうだったかというと、反省しなければならない問題があるなと思い、いまこの文章を書いている。
3人以上の人がいる場で差別発言が出たときにどうすべきか。最優先で考えなければならないのは、その人が差別発言をするのを続けさせないことである。
その人が自身のやってしまった言動をふり返り、それが差別であることに気づき、「今後」同じような差別をしないようにしようと考えてくれれば、そりゃ一番いいのだろう。だから、まわりにいる人間は、その人がなぜそういう発言したのかを聞き、それが差別であるということをその人に納得させ、今後そうした発言をしないよう説得しようということを、ついつい試みてしまう。
でも、差別発言が飛び出したときに、まわりの人間が最優先で対処すべきなのは、説得や議論などではなく、「いま」「この場で」おこなわれている差別発言をとにかくストップさせることである。
ストップさせると一言でいっても、そのやり方にはいろいろと幅があると思う。こわい顔をして「だまれ」と言うものから、もう少しおだやかに話題を無害なものにずらすというやり方もあるだろう。差別発言した人と自分の力関係もあるので、つねに断固とした強い態度で「差別をやめて」と言えるわけではないだろうけれど、いずれにしろ一番の優先課題は「いま」「この場で」の差別発言をなんとかして止めるということだろうと思う。
先日の会食では、まわりにいた4人ぐらいの人が、差別発言をした人と「議論」をしてしまった。今になって反省してみると、これはまちがいであった。
私たちはその人に「あなたはなんでそう思ったの?」とか「どういう根拠があってそんなこと言えるの?」とか聞いてしまった。で、その質問に答えるたびに、その人はつぎつぎと新たな差別発言をくり出してくる。そのたびに「それは差別だ」と批判すれば、その人は自己正当化の理屈でまた新たに差別をぶちこんでくる。離れた席にいて当初このやり取りに参加していなかった人たちも、こちらが不穏な雰囲気をかもし出しているものだから、「なんの話してるんですか?」と会話にくわわってくる。こうして、差別発言のとびかう加害的な状況に、本来なら巻きこまなくてもよかった人まで巻きこんでしまった。
もちろん、差別発言をするその人が全面的にわるいのだが、それをすぐに止めずに差別発言が出てくる状況を継続させてしまった責任は私たちまわりにいた者にもある。差別発言が出だした早い段階で発言を止める、あるいはその場の話題を別のものに転換させるということはできたはず。その人の考えを聞くにしても、その場から離れて別のところで話す(ゾーニング)という方法もあった。
こうして後から考えてみると、とるべき対処というのはあきらかなのだけれど、その場ではまったく反対のまずい行動をしてしまったな、と。というわけで今後の教訓とします。
0 件のコメント:
コメントを投稿