2024年2月10日

差別は正しく「差別」と呼ばなければならない

  政府が、永住者の在留資格について、税金や社会保険料を納付しないケースなどで在留資格を取り消せるよう入管法を改悪する検討をしているとの報道が出ています。

税や保険料を納めない永住者、許可の取り消しも 政府が法改正を検討:朝日新聞デジタル(2024年2月5日 15時49分)

 記事の冒頭段落だけ引いておきます。


 政府は、「永住者」の在留許可を得た外国人について、税金や社会保険料を納付しない場合に在留資格を取り消せるようにする法改正の検討を始めた。外国人の受け入れが広がる中、公的義務を果たさないケースへの対応を強化し、永住の「適正化」を図る狙いだ。


 「適正化」ですって……!

 だれがそう言ったんでしょうか? 法務省か入管庁の役人の言葉なのでしょうけど、どういう意味で「適正化」などと言えるのか。「税金や社会保険料を納付しない場合に[永住者の]在留資格を取り消せるようにする」ことを「永住の適正化」と称するセンスには、驚愕(きょうがく)するほかありません。明白な差別ではないですか。

 これを報じる朝日新聞の記事では、「永住の『適正化』」と一応はカギカッコをつけてはいるものの、それを「適正化」なのだとする役人の言い分を、無批判にまとめるだけの記事になっています。カギカッコをつけるだけでごまかさずに、政府がもくろむ法改定が差別だということを指摘すべきではないでしょうか。

 当然ながら、「税金や社会保険料を納付しない場合」には、日本人であれ外国人であれ、おなじペナルティが科されることになっているわけです。滞納すれば督促状が送られてくる。それでも払わなければ延滞金を請求されます。預金や不動産など財産を差し押さえられることもあります。

 政府が「永住の適正化」と呼ぶ施策は、こうしたペナルティにくわえて、外国人の場合にのみ、さらに重ねてべつのペナルティをも科すということです。しかも、それは永住者の在留資格を取り消すという、きわめて重い不利益処分です。

 税金や社会保険料の未納・滞納という同一の行為について、特定の属性の住民にだけ特別に重いペナルティを科すのは、「差別」と呼ぶべき行為です。これを「永住の適正化」と言い表すのは、侵略を「進出」と呼び、敗走や撤退を「転進」、裏金作りを「収支報告書への不記載」と呼ぶのにも似た欺瞞(ぎまん)です。差別は正しく「差別」と呼ばなければなりません。

 さて、これも当然の話ですが、税や社会保険料をげんに負担しているのは、日本国民だけではありません。永住者の在留資格をもつ人もふくめ、外国人住民も、税や社会保険料の負担者です。その意味でも、日本社会は外国人をふくめた住民によってささえられているのであって、日本国民もそうした社会でささえられ生きているわけです。こうした認識からは、外国人の滞納者にのみことさら重いペナルティを科そうなどという、いまの政府のような発想がでてくるはずはありません。

 対して政府の発想は、「外国人が義務をはたさないために、国民が(日本人が)迷惑や過度な負担をこうむっている」という虚偽の、かつ差別的な認識に根ざしたものです。ここで「外国人が/国民が(日本人が)」という単純化された対立軸が設定されて、さらにマジョリティである「国民(日本人)」がいわば被害者側に位置づけられるという思考が、まさに差別的なのです。「在日特権」「逆差別」といったたわごととまさに同じ構造です。

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