うその難民申請をした疑いでネパール人の男を書類送検 宮城県内では初の立件|FNNプライムオンライン(2025年4月25日 金曜 午後4:45)
仙台放送の報道ですが、県警のやっていること、めちゃくちゃである。
おととし5月、うその難民申請をして日本に在留したとして、宮城県警はネパール国籍の男を書類送検しました。
虚偽申請違反の疑いで書類送検されたのは、栃木県に住むネパール国籍の男(34)です。警察によりますと、ネパール国籍の男性はおととし8月、難民認定に関する調査などを行う東京出入国在留管理局で、難民ではないのに「宗教上のトラブルで難民になった」とうそをつき、在留資格の許可を不正に受けた疑いが持たれています。
まず疑問が浮かぶのは、宮城県警はどうやって「うその難民申請」だと判断したのか、ということである。
上の記事の引用しなかった部分を読むと、県警はこの男性を別件(「不法就労」あっせんの容疑)で逮捕し、調べていたようである。おそらく、その調べの過程で、難民申請の内容がうそだったという本人の供述を引き出したということなのだろう。ニュースでは、男性が「金を稼ぐためにうその難民申請をした」と容疑を認めているということも報じている(県警がプレスにそう言っている、ということですね)。
で、かりにこの人がそう「自白」したのだとして、それをうらづける根拠となるものはあるのだろうか。
難民申請は、申請者本人が申請書類に記入して地方入管局に提出するものなので、その申請書は入管が保有している。しかし、その内容はきわめてセンシティブな個人情報であって、本人の同意なく第三者にもらしてよいものでは、けっしてない。たとえば、政治的な主張、活動の履歴、所属している党派、信仰、セクシュアリティなど、難民申請者にとって生命にもかかわりうるような秘匿すべき情報がそこにはふくまれていることがある。
だから、入管が警察であれ第三者に個人の難民申請の内容を勝手に伝えるということはあってはならないし、ないはず(さすがに「ない」と思いたい)である。
とすると、宮城県警は、本人の供述だけで、この人の難民申請を虚偽申請と判断して、送検したということだろうか。
警察がどういうふうに「虚偽申請」だと判断したのかというところも疑問なのだが、そもそも、難民申請について「虚偽申請」を刑罰の対象にしてよいのか、という問題もある。
もちろん一般論としては、虚偽の申請によって不正に利益を得ることを防止するため、これに刑罰を科すことが必要な場面があるということは、わかる。しかし、難民申請について、その一般論がなりたつだろうか。
まず、先に述べたように、どうやって申請内容を虚偽だと判断するのかということがある。申請書類に警察などがアクセスするなど許されるべきでないし、アクセスしたとしても、申請内容がうそであるという判断を司法がどうして下せるのか。
また、申請内容が警察ふくむ第三者にもれることがありうるとなったら、こわくて申請をためらうという人も出てくる可能性があるのではないか。難民認定制度は、命を救うための制度であるわけで、申請のハードルを上げるような要因はできるだけ取りのぞくべきだ。
「虚偽申請」を刑罰の対象にしようとすること自体、申請のハードルを上げるねらいなのはあきらかだけれども、命を救うための制度でこれをやるのは、どう考えてもそぐわない。難民認定制度というのは、一応は「保護の必要な人は申請してください」という制度であるはずで、「刑罰を科すぞ」とおどして申請の心理的障壁を高くするのは、まったくもってちぐはぐである。
「うそをつかなければいいじゃないいか」と言う人がいるかもしれないが、そう思えるのは、警察などを無批判に信頼できる、おめでたい人たちだけである。
そういうわけで、難民申請について「虚偽申請」を犯罪としてあつかい刑罰の対象にするということには、いくつもの疑問をぬぐえない。
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