少し前のニュースだが、勾留中に警察官から虐待を受けた人が東京都に慰謝料等を求める裁判を起こしたとのこと。
新宿署で勾留中に「パンツ一丁」で拘束、下着汚すと「みっともねえな」と侮辱 20代男性が提訴 - 弁護士ドットコムニュース(2022年09月28日 09時56分)
訴状によると、男性は、勾留中の今年7月、体調を崩した同室の男性のために「毛布1枚だけでも入れてやってくれませんか」と頼んだところ、留置担当の警察官に「保護室」と呼ばれる別室に連れて行かれた。
さらに「パンツ一丁」の下着姿にされて、身体を拘束された。トイレにも行かせてもらえず、そのまま下着を汚してしまい、涙を流していたところ、警察官は「みっともねえな」と言い放ち、侮辱したという。
警官どもがなんのためにこういう行為をするかといえば、わかりきったことだ。屈服させるためである。自尊心をうばうことで、力の優位を示す。抵抗しようなどという気が起きないように暴力をふるうのだ。
こういう他者を服従させるための暴力は、社会のすみずみにありふれているものだけれど、どこであってもゆるされるべきではない。警察官のような公的機関の権力をあたえられている人間であればなおさらのこと、このような暴力はゆるされない。
上にリンクした記事は、警察官の事例だけれど、入管の収容施設でも、これと本質的に同じかたちの暴力が職員によって日々ふるわれている。その一例として、現在、大阪地裁で被害者による国賠訴訟のおこなわれている事件をとりあげておきたい。
仮放免者の会(PRAJ): 大阪入管暴行事件で和解成立 / 大阪入管でのもうひとつの暴行事件裁判にも注目を(2022年10月3日)
2017年12月に起きた大阪入管職員たちによる暴行事件である。くわしくは、リンク先の記事の「Bさん事件の概要」以下を読んでいただきたい。
大阪入管での事件は、冒頭にみた新宿警察署での暴行事件と同様、「保護室」への隔離のもとでの暴行であった。被害者のBさんは、カギのかかった部屋に「隔離」され、すでに自由を奪われた状態だった。にもかかわらず、入管職員たちはBさんにわざわざ後ろ手錠をかけて14時間以上にわたり放置した。トイレに行くこともゆるさず、Bさんが便で下着をよごしてもそのままほったらかしである。さらに、後ろ手錠で身動きのできないBさんの腕をねじりあげ、骨折させる暴行までくわえている。
なんのために入管職員たちはこういうことをするのだろうか? 答えはあきらかだ。屈辱をあたえて自尊心をうばい、力の優位を示して、被収容者を屈服させるためである。
これほどの野蛮がまかりとおっているのが、入管というところだ。職員の人権意識が足りないとか、たんにそういう問題ではない。だって、Bさんを暴行した職員たちはだれひとり処分されていないし、大阪入管局長ら幹部もなんら責任を問われていないのだから。入管は組織としてこの職員たちの行為を容認しているのである。人間をしばりあげて長時間トイレに行かせずに便をたれながさせるという行為を職員がおこなっても、問題にせずだれの責任も追及しない。そういう組織なのだ、現状は。
そもそもこの大阪入管の事件は、組織内の処分ですまされるような問題ではなく(それすらなされていないのだが)、刑事責任に問うべきものだろう。ところが、刑事事件として捜査すべき警察も、さきの新宿警察署の事件からもうかがえるように、人を屈服させるためにふるう暴力を肯定・容認・活用する野蛮さにおいて入管とかわらない。
そういうわけで、「私はゆるさない」という意思表示を私はしたいと思う。
被害者のBさんが国に賠償をもとめて2020年2月に起こした裁判は、現在もつづいている。次回の期日は以下の日時にておこなわれる。
2022年11月21日(月)、11:00から
大阪地方裁判所1006法廷